新阿蘇大橋建設プロジェクト

困難な道にこそ、
挑む価値がある

#03工務

長尾 賢二

KENJI NAGAO

工学研究科 建設工学専攻 修了/2004年入社

生まれは徳島県。趣味は映画鑑賞と、40歳を過ぎたあたりから始めたジョギング。休日はできるだけ体を動かすことを心がけている。中学生の娘と、小学生の息子がおり映画館に連れていくことも多い。

※内容は取材当時のものです

長尾 賢二の画像

長尾 賢二

KENJI NAGAO

工学研究科 建設工学専攻 修了/2004年入社

生まれは徳島県。趣味は映画鑑賞と、40歳を過ぎたあたりから始めたジョギング。休日はできるだけ体を動かすことを心がけている。中学生の娘と、小学生の息子がおり映画館に連れていくことも多い。

※内容は取材当時のものです

PHASE01

見たことのない光景

「こんな場所に橋を架けられるのか……」。長尾は現地に降り立った瞬間、その光景に圧倒された。南阿蘇地域には、柱状節理と呼ばれる、火山から流れ出た溶岩が冷え固まり、規則正しい柱のような割れ目が形成されている。巨大な岩が何層にもなって連なっているような状態だ。ここに橋を建設することなど、長尾には想像ができなかった。

「これまで様々な現場に携わってきましたが、見たこともないような地盤でした。難工事になるのはもちろんのこと、短工期でのプロジェクトだったこともあり、相当な力を結集しないと工事は成功できないと感じましたね。私のキャリアの中でも最も困難な仕事になるだろうと思いましたが、成功の暁に得るものは大きいはずだと、覚悟を決めました」

長尾は2018年4月から工務として本プロジェクトに携わり、竣工が近づく2020年3月からは現場代理人も務めた。設計照査や施工計画の立案、安全・品質・工程の管理、発注者・コンサルタント会社との協議など、業務は多岐にわたる。プロジェクト全体を俯瞰的に見ながら、一日も早い開通を目指し、現場の監督を行っていた。

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PHASE02

特殊な環境が行く手を阻む

掘削を進めていく中で大きな岩にぶつかり、予定の変更を迫られるなど、土木工事は当初の計画から修正を重ねていくことが多い。つまり「進めてみないと分からない」ことが多々あるのである。本件は短工期のプロジェクトであるため、できる限り当初のスケジュールを変えることなく、進捗させることが求められた。

「予定通りに進めたいと思っていても、土木は自然を相手にするので、そう思い通りにはいきません」

急峻な地形での橋梁工事では、工事用桟橋を設けてクレーンを配置し、資機材の搬出入を行うのが一般的であるが、橋を架設する地区は年間を通じて強風となることが多く、建設資材や重機などを安全かつ安定的に供給することが困難と考えられた。そこで当初の計画を変更し、インクラインと呼ばれる資機材を運ぶための大型エレベーターのようなものを設置。これにより安全で安定的に資機材を運搬できるようになり、工期の短縮につなげた。

「どれだけ入念に調査や準備を行っても、予期せぬことが起こる。それが土木工事の難しさです。だからこそ、起こりうるトラブルを予見し、未然に防がなければならないのです。例えば大型インクラインの導入もそうですが、緻密な施工計画、材料変更による効率化、タイムリーな資機材調達、ICTの活用、人員確保など、工期短縮につながるあらゆる工夫を施しました」

長尾が心がけたのは、それだけではない。

「無事故・無災害で工程遅延なく、完了できた一番のポイントは、工事関係者の良好なコミュニケーションだと感じています。園部所長の『何でもしゃべる』というスローガンのもと、非常に風通しの良い雰囲気が醸成され、社員や協力会社の人たちが意見をぶつけ合いながら一体となって、一つの目標に向かうことができました。私も主張すべきところは主張しますし、相手の意見を尊重すべきと感じたときは、素直にそれを受け入れるようにしています。そうした姿勢を見せることで、部下や職人さんたちが発言しやすい職場になると考えています」

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PHASE03

成功体験が、さらなるチャレンジにつながる

長尾はその後、現場代理人として引渡しまで工事に携わった。当初は困難に感じていたプロジェクトであったが、一つひとつ課題を解決し、約1年4ヶ月の工期短縮を実現させた。難しい道のりであるほど、乗り越えた先で得られたものは、やはり大きかった。

「本プロジェクトを通じて、『技術で社会貢献を実現する』という土木技術者の使命とも言える想いを、日々感じながら仕事をできたことは、とても誇らしく、自分にとって財産になっています。新阿蘇大橋の早期開通につながり、開通式で関係者の方々から労いのお言葉をいただけたときは感無量でした。はじめはこの場所に橋が架かるとは想像できませんでしたが、開通した今は、この新阿蘇大橋の存在が人々にとって『当たり前』になってくれたら嬉しいです」

難工事を成功に導いた長尾には、大きな目標がある。

「本プロジェクトの経験を活かし、いつの日か作業所長として現場を運営してみたいと思っています」

新阿蘇大橋で得た手ごたえが、長尾に新たなチャレンジへの闘志をもたらしていることは、間違いないだろう。